情報システムセミナーレポート[2019年 秋] ERP レガシーシステムを刷新せよ!「2025年崖」対策急務!

2019年11月14日(木) 東京会場

C31
13:30〜14:30
待ったなし!「2025年の崖」対策
レガシーシステムの入れ替え急務 — その問題点と背景に迫る —

桔梗原 富夫 氏
株式会社日経BP 日経BP総研 フェロー

「2025年までにシステム刷新を集中的に推進し、デジタルトランスフォーメーション(DX)に乗りだすべき」――。経済産業省の「DXレポート」は、企業が複雑化・ブラックボックス化した既存の情報システムの問題を解決し業務自体を見直しできなければ、2025年以降、年間で現在の約3倍の規模に当たる最大12兆円の経済損失が生じる可能性を「2025年の崖」として警鐘を鳴らし、産業界に大きな衝撃を与えました。企業にレガシー(旧)システムから脱却し最新のIT技術を駆使し新たなビジネスモデルを構築することを求めたものです。当セミナーはこの警鐘を受け、経営者や企画・IT部門のリーダー向けにレガシーシステムからの脱却やDXを推進する上でのポイントについて実態を踏まえて提言しました。

デジタルトランスフォーメーション(DX)が大きな潮流に

今起きているITからデジタルへの変化は、システムの付加価値の源泉がソフトからデータ、そしてそこから得られるインサイト(洞察)へ変わりつつあることを意味します。

デジタルトランスフォーメーション(DX)はITによる業務効率化とは異なります。最新のデジタル技術とデータを活用して新規事業や新商品、新サービスを創出したり、新業態や異業種に参入したりすることを指します。ただし、広義には本業でのデジタル活用を推進したり、顧客接点の高度化や働き方改革につなげることも含みます。その目的は企業の競争優位を確立することです。

デジタルトランスフォーメーションとは

自動車業界のCASEはDXの典型例 AI実用化は画像・音声認識で先行

自動車業界にはDXの波がCASE(Cコネクト=つながる、Aオートノマス=自律化、Sシェア=共有、Eエレクトリック=電動化)やMaaS(Mobility as a service=サービスとしての移動)という形で押し寄せています。CASEやMaaSは自動車業界だけではなく、その周辺の産業をも巻き込んで、破壊的な変革を引き起こします。2019年のノーベル化学賞受賞が決まった旭化成の吉野彰名誉フェローはFuture Mobility Summitというイベントで、「CASEはこれまで(定義や意味があいまいな)バズワードの感が強かったが、いよいよ現実になるだろう」と述べています。

DXを推進する強力なドライバーになるのは、クラウドやモバイル、ソーシャル、ビッグデータ、IoT、AI、ロボット・RPA、5Gといった最新のデジタル技術です。クラウドはすでに企業の6割が利用し、そのうち8割が効果を実感しています(総務省「通信利用動向調査」)。あらゆるモノ、サービスがスマホ活用を前提につくられる時代になりました。そして2025年には416億台のIoTデバイスがつながり、1年間に80ZB(ゼタバイト=ゼタは10の21乗)と想像を絶する莫大な量のデータを生み出すとの予測もあります。

AIは第3次ブームと言われていますが、今回は本物です。コンピュータの計算能力は飛躍的に高まり、ディープラーニング(深層学習)など機械学習が進歩する中で、ビッグデータも入手できるようになり、画像や音声の認識技術が先行する形で実用化が進んでいます。

迫り来る「2025年の崖」 越えられなければ12兆円の経済損失

企業は今、生き残りをかけてDXに取り組むことが求められています。その際、改修を重ねてプログラムコードが複雑になりブラックボックス化した基幹系システムがDXを阻害する大きな要因になると、経済産業省が2018年9月に発表したDXレポートでは警告しています。事業構造の変化に合わせて基幹系システムを迅速に改変するのが難しいからです。デジタルサービスを担う新たなシステムとの連携も、基幹系システムが老朽化するほど難度が上がります。このまま放置すると、DXを実現できなくなるだけでなく、システムの老朽化に伴うハードウエアの故障やソフトウエアの不具合など、レガシー化したシステムに起因する障害で、2025年以降は毎年最大12兆円の経済損失が生まれると指摘しています。これが「2025年の崖」です。

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が実施した「企業IT動向調査2019」によれば、21年以上前から稼働する基幹系システムを使う企業は22.3%、10〜20年前は33.8%でした。このままでは、老朽化したシステムの保守運用に多くのコストや人員を割かざるを得なくなります。DXレポートでは、企業のIT予算の9割以上がレガシーシステムの維持や管理に費やされるようになると指摘しています。IT人材に関しても2025年に全体で約43万人が不足するとみており、新しい技術を取り入れたり、老朽化したシステムを維持管理したりするために十分な人員を配置する余裕はなくなります。基幹系システムがブラックボックス化してしまった要因は、顧客の要望に次々と応えてしまうシステムインテグレーター側にも問題があります。パッケージ製品の導入でさえ多くのアドオンが発生し、2025年の崖のリスクを招いてしまった面があります。

ではレガシーシステムをどうしたよいのでしょうか? 「将来のビジネス価値」と「保守性」の2つの軸で評価することを推奨します。ビジネス価値が高く保守が難しいしいシステムは作り変えるのがよいでしょう。やり方としては、①アプリケーションロジックを変更せず、言語も同じまま別のプラットフォームに移行するリホスト、②ロジックは変えることなく、言語とプラットフォームを変更するリライト、③システムを全面的に再構築し、データのみを変換・移行するリビルド――の3つが代表的です。新しいプラットフォームとしてクラウドを利用することもできます。

ビジネス価値が高く保守が容易なシステムは機能の追加や強化で改善します。逆にビジネス価値が低く保守も難しければ、思い切って捨てることを考えるべきです。収益性が低いサービスを廃止したり、競争力のないシステムをパッケージに置き換えたりします。ビジネス価値は高くはないが、さりとてないと困る。保守も何とかなるというシステムはそのまま塩漬けにするとよいでしょう。改善の具体例を紹介しましょう。あるビール会社は、既存の営業支援システムはそのまま残し、クラウド上に新機能を開発し、両者を連携させました。これにより、外出先からスマホで訪問先に関する営業情報を入力するといったことができるようになり、社員の生産性が格段に向上しました。

ERPシステムの中にもレガシー化しているものがあります。レガシーから脱出する指針としてチェックポイントがいくつかあります。「経営方針としてデジタル化に舵を切っている」「システムの画面や業務プロセスが現場にやり方に合っていない」「10年以上同じシステムを利用している」などの場合は、ERPの新規導入で刷新する「リビルド」で進めるとよいでしょう。逆に「デジタル化は今後の検討課題」「画面や業務プロセスは現場のやり方に合っている」「2年以内に基幹系システムを刷新する必要がある」などの場合は、既存のERPのバージョンアップに近い形で導入する「コンバージョン」に取り組みます。ERPは今後、オンプレミスで稼働するパッケージの比率が下がり、クラウドサービスのSaaS(サース=Software as a Service)形態が増えていきます。調査会社のITRは2022年度にはSaaSで利用する割合が半数に上ると予測しています。

SoRは1階、SoEは2階 DXの推進には1階も重要

企業ITの中心は従来、ビジネスを支えるSoR(Systems of Record=記録のシステム)でした。例えばERPのようなシステムです。現在は競争に勝つためにデータを戦略的に活用して、企業とユーザーをつないでいくSoE(Systems of Engagement=繋がりのシステム)の重要性が増しています。DXの対象になるのはSoEのシステムです。SoRとSoEは家に例えると、SoRが1階部分、SoEが2階部分に相当します。1階がグラグラしていたら、よい2階は建ちません。

SoRは基幹系ですから安定性が重視されます。しっかりと要件定義をして、ウォーターフォール型で開発します。一方、SoEは顧客体験が重要であり、多様なデバイスへの対応や俊敏な開発が要求されます。あらかじめ仕様を固めるのが難しいため、トライ&エラーのアジャイル(agile=俊敏な、素早い)手法を採用します。これまでは社内のIT部門はユーザー部門の要望に沿って開発する受身の姿勢、ユーザー部門はIT部門まかせのお客様体質になりがちでしたが、DXを実現するためには「ワンチーム」になってデータを活用し新たなサービスを開発していく態勢が必要です。

データは活用と防衛 サイバーセキュリティ対策を万全に

DXを推進する際には、サイバーセキュリティ対策にも気を配る必要があります。働き方改革によって、スマホやノートパソコンを使って、オフィス外部のネットワークからアクセスするケースが増えました。当然、セキュリティのリスクも高まります。また、情報処理推進機構(IPA)が掲げる「情報セキュリティ10大脅威2019」の組織向け脅威で「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃の高まり」が新しく4位に入ったことも注目されます。大企業を攻撃する際に、対策の手薄な取引先の中小企業のシステムに侵入し、そこを足がかりに大企業のシステムに侵入するケースが増えています。サイバーセキュリティ対策は経営課題であるという意識を持つことが重要です。対策をしっかり実施し、デジタル技術を駆使するDXを成功させ、競争を勝ち抜きましょう!

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