将来の企業成長を見据え、転換期に備える 変化の先の勝機をつかみ取る。 オービック 情報システムセミナー 2011年新春 開催レポート

情報システムセミナー[2011年 新春] 基調講演(4) 物流改善貴社の業務改善に今すぐ役立つ「物流業務改善の実務」

セミナー冒頭で、前日に新大阪駅のキオスクで見つけたという現場写真をスライドに映した横山氏。ほかにも物流拠点の移転を行った医薬品会社や、移動距離の無駄を指摘した通販会社の物流倉庫の実例など、物流現場における実例を次々と写真入りで紹介していきます。会場では、自社の環境を思い浮かべながら写真を凝視する方が、数多く見られました。

2011年2月9日(水) 東京会場

B13
9:30-10:45
貴社の業務改善に今すぐ役立つ
「物流業務改善の実務」
横山 英機 氏
株式会社 流通エンジニアリング 代表取締役

物流業務改善で目指すべき“トレードオン”の関係

まず、物流現場で合理化を行うためには、コストをしっかりと“見える化”する必要があると横山氏は力説します。
「それは、コストを正確に把握しないと合理化した結果が見えないためです。また、コストを発生させた元を絶つ必要があるため、業務構造の見える化も欠かせません。構造化に当たっては、一人何ピースピッキングできるかなどの基準値を持ち、最終的に財務諸表に反映させる必要があります」

物流の歴史を紐解きながら、もう既に登場している「クリーン物流」というキーワードに言及した横山氏は、現在の物流において合理化するポイントはどこにあるのかと会場に問いかけます。入荷後に在庫して出荷するDC(Distribution Center)と、入荷してすぐに仕分けされるTC(Transfer Center)、メーカーから直接小売りに届けられる直送という3つのパターンがあり、それぞれのパターンで物流の合理化が検討できると横山氏は語ります。

特にDC部分の在庫が一番手ごわい部分であり、保管センターにある在庫を合理化して、顧客満足度を高めて、いかにリピートにつなげるのかが大きな合理化の目標になると横山氏。
「現実には、建物や設備の費用に始まり、人件費や車両費、コンピューター費などの物流コストが考えられますが、コストとサービスのトレードオフという関係ではなく、ロジスティクスを見直すことでコストを落としながらサービスを上げる『トレードオン』の関係を目指すべきです。このコストをしっかりと把握するということが重要です」

物流コスト把握に役立つ“3次元”の考え方

管理会計を中心に考えるコストは、実は把握しづらいものです。ローコストオペレーションに寄与する資料を元に、そこから導き出される数値をベースに業務効率を高める体制作りが必要です。しかも、その体制の中でどの部分に弱点があるのかを発見できるようなコスト集計の仕方が重要で、単に勘定科目に応じた集計方法を実践するだけでは意味がありません。重要なのは3次元でのコスト集計を行うActive Based Costingだと横山氏は指摘します。ただ、物流の世界は材料など直接的なコストが少なく、さまざまな業務を行うことでの間接コストが圧倒的に多いものです。行った仕事を配分し適切に集計必要があります。

「まず、会計処理で行ってきた勘定科目を中心に、作業ごとのグルーピングを設定するのが1次元です。そして、このグルーピングされた作業ごとに、入荷や保管、出荷などの機能別にコストを配分していきます。配分の基準は、実際の物流活動それぞれに何時間ぐらいかかっているのかの計測を行い、その比率を元にコスト配分するのが良いでしょう。これが2次元です。そして最後の3次元は、部門別であったり製品群別であったり、企業に応じたコストの軸を設定すればいいわけです。もちろん、コスト配分は注文行数やピース数などを適用しても構いません」

ここで横山氏は、ロジスティクス協会が調査したデータを紹介し、2009年度の物流コストの削減策の中で注目されているのが「環境・省エネルギー」という項目だと指摘します。また、この2009年の実績では、物流業務の改善のために多くの企業が行っているのが「在庫の削減」であり、在庫の高回転化を行うことでスペースを確保し、新しい商材を仕入れることができるような活動をしているのです。ほかにも、「物流拠点の見直し」や「積載率の向上」などが上位に挙げられています。

物流業務改善に欠かせない全体的視点

次に、物流機能の課題について横山氏は、「よく多品種・少量といわれますが、実はそうではありません。出荷品目の多い順位に並べて見ると、実は取扱品目の13〜14%程度の商材で出荷量の9割ぐらいを占めているのです」と指摘します。そして、その荷物が検品場所のそばに置いてあるかどうか、会場の皆さんに問いかけました。
「物流センターの仕組みを考える際には、自社の物流の実態を見える化した上で行うべきです。又、多頻度・少量で波動が大きい状況の中でコストを考えていかなければいけないからこそ、さまざまなことが判断できるゼネラリストの視点が求められているのです」。
受講者の中には横山氏の問いかけに、大きくうなずく方々が数多くいらっしゃいました。

具体的には、物流業務の中身を見て合理化できる部分を考えていくことになりますが、物流部門だけでなく、販売部門や生産部門とのインターフェースやシステム連動が構築できていないと部分最適にしかなりません。全体最適化のためには、経営や顧客、購買なども含めた全体的視点で物流の合理化を行っていく必要があります。また、物流機能の各機能をそれぞれレベルアップすることで、サービスとコストの関係がトレードオフからトレードオンにできると横山氏は断言します。

ただ、物流の生産性に関するデータが収集しづらい部分もあるため、当初の計画通りに行われているかどうかを必ず振り返ってみてくださいと横山氏は会場に投げかけます。
「計画通りにいかないことを前提に、どうやって合理化していくかを考えるべきで、ルールを守らせるつもりがうまくいかないという『ル』の言葉を追加した『アカサカマモル』を念頭に、現場を根気よく改善していくべきです」

「もちろん、物流改善した結果が損益計算書や貸借対照表に表れる努力をする必要がありますが、具体的には『販売一般管理費を下げる』という成果が出てこないと利益が上がりません。また、物流部門は、在庫を監視して効率化を図って生産性を上げた結果が在庫の高回転化につながるような努力をする必要があります。これらの成果が財務諸表に現れるような活動を皆さんは行っていくべきです。」と横山氏は熱く語り、講演を締めくくりました。

物流現場を知り尽くした横山氏の、熱のこもった講演内容に、拍手が会場を包み込みました。

コラム

コストの見える化や物流業務の合理化、そのための基準値設定の重要性を語っていただいた横山氏の話を受けて、長年ソリューションを提供してきたオービックのノウハウを解説。主に小売業の具体的な事例を交えつつ、SEならではの視点で物流業務改善の考え方を紹介します。

物流業務における売上拡大の方策と情報の重要性

まず、ロジスティクスの発展で達成すべきことは、「売上高の拡大とコスト削減が重要」という横山氏の講演を引用し、オービックのSEが考える売上拡大の考え方について紹介しました。それは、適正在庫の管理やピッキング効率を高めるなど、在庫回転率の向上による売上機会損失の防止を図り、出荷量を増加させることです。また、コスト削減には、業務効率化や“6つの「ない」”を実現するなど作業の標準化、効率化が大きく寄与するポイントになります。

そのためには、商品の発注状況や在庫の滞留状況、売上状況を把握するための情報分析や、作業改善を図るためのシステム化が、物流改善につながってくると考えています。情報分析におけるさまざまな切り口がある中で、商品投資効果分析を行っている事例をはじめ、費用対効果を分析した実例を紹介しながら情報分析の重要性について説明します。重要なポイントは、情報分析を行うためにはシステムの中に分析できる情報がなければならないということです。他にも、入荷予定情報や出荷指示情報を使ってハンディーターミナルを用いた入出荷検品システムを構築するなど、簡易なシステムで現場業務の改善ができると提案します。

物流業務の改善を果たした2つの成功事例

ここで、物流現場におけるスポーツ用品卸A社と婦人用品通信販売B社の事例を取り上げ、オービックが手がけた物流現場でのシステム構築ノウハウを披露しました。

A社では、オフコンなどの古くからのシステムが使われていたことで、在庫状況がリアルタイムに把握できず、さらに出荷作業や入荷作業において人手による検品作業に膨大な時間がかかるなど、さまざまな課題がありました。そこで、出荷作業ではバーコード検品を行うことで、出荷ミスを大幅に削減したり、入荷データや返品データを無線ハンディーターミナルでスキャンすることで、検品作業を大幅に改善することに成功。顧客満足度向上とコスト削減を達成しました。ペットボトルなど水分が多い倉庫では電波が乱反射してしまい電波が飛びにくくなるという話題や、アンテナ配置と消防法の関係など、構築経験が豊富なエンジニアならではのアドバイスも飛び出しました。

また、ピッキング作業や誤出荷防止などに課題があったB社の事例では、作業動線に合わせたピッキングリストを作成することで作業の大幅な効率化を実現。コスト削減のみならず、ピッキング作業の効率化によって5000個から最大12000個にまで出荷量が増え、売上増加を可能にしました。出荷検品システムにおいては誤出荷防止を実現し、最終の出荷可否チェックの仕組みにおいては、ベルトコンベアに接続したシーケンサと連動した仕組みを構築しました。アプリケーションでデータ送受信のタイミング調整に苦労した現場でのこぼれ話を披露しました。

OBIC7では、輸出入管理や棚卸評価機能が組み込まれた販売情報システムを提供しており、出荷基準や検収基準、着荷基準などIFRSに対応したメニューが選択できるようになっています。自社倉庫で使う入出荷管理や在庫引当機能なども柔軟に選択でき、物流現場でも役立つ仕組みとして活用することが可能です。また、個人認証やアクセス制御、ロギング、承認制御など、内部統制対応に合わせて強化された共通基盤も持ち合わせています。さらに、業務に合わせたテンプレートを提案し、専任の担当が構築からサポートまで携わるワンストップソリューション体制を整えています。
物流業務効率化のお手伝いについても、ぜひご相談いただければと思います。

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