多くの経営者が、経理部門に漠然とした不満を訴えるようになりました。「財務会計に基づき経営するのはバックミラーを見ながら運転するようなものだ」、「経理部門は経営参謀の役割をしてほしい」、「制度しか興味のない経理部は不要、経理部はなくすことにしました」という意見もあるほど。経営者の要求に応えられるために、経理部門に求められるものは何でしょうか? ITおよび会計の世界で有名な金子氏の講演とあって、朝早い時間帯ながら定員を大きく上回り、サテライト会場を設けるほど盛況なセミナーとなりました。
「現状の経理部門のあり方と、経営者が望むあり方には、大きなギャップがあります」と、金子氏は呼びかけます。経営者が、経営を支援する情報が欲しいと願っても、財務会計を中心に行ってきた経理部門は、なかなか応えることができません。それゆえ、財務会計は経営にまったく役立たないと指摘する経営者もいるそうです。このことからも、経理部門には財務会計の作業に追われることではなく、戦略的役割となる管理会計の担い手になることを、経営者は望んでいることがうかがえます。
では、この財務会計と管理会計の違いは何でしょうか?
財務会計の起源は、中世ベニスの貴族が行っていた貿易船です。貴族たちが資金を出して商船と乗組員を雇い、貿易に旅立たせます。そして船が帰港した後、収益を分配するために貴族に収支の正確な報告を要求したこと、これが財務会計の考え方の基となっています。財務会計の利用者は、かつては貴族であり、現在では株主です。関心の対象は、どのようにモノとカネが動いたかなどの過去の情報になります。これに対し、現場の船長や乗組員が必要とする情報を提供するのが、今でいう管理会計です。乗組員が求める情報は将来を予測できる情報であり、過去の情報ではありません。
「経営者が『財務会計に基づき経営するのはバックミラーを見ながら運転しているようなもの』と表現したのは、このことを指していたのです」(金子氏)
財務会計が会社法や税法などの法制度を拠り所とするのに対し、管理会計の拠り所となるのは「どのように経営したいのか」ということのみ。このように、財務会計と管理会計は根本的に性質を異にするもので、財務会計が経営に役立たないという論理は、このことに根ざしていたのです。
「経理部門をなくすことにした」という経営者の意見を紹介しましたが、その方は社員をクビにするとまでは言っていません。付加価値の低い仕事から解放し、役割転換を図るために「財務会計の集約化」と「スキルのみならずマインドも含めた人材教育」が必要になるという意図があったのです、と金子氏は語ります。
ここで示したのが製造業の「スマイルカーブ」です。横軸には製造業の上流工程から下流工程に向かって、企画開発、組み立て・製造、アフターサービスがあり、縦軸が付加価値です。そうすると、上流工程と下流工程の付加価値が高く、中央の組み立て・製造の部分が落ち込んでいます。この曲線が笑顔の口元に似ているために「スマイルカーブ」と呼ばれています。
日本が得意とする高品質な「ものづくり」のプロセスも付加価値が下がっていますが、その背景にはデジタル化があります。デジタル化によって品質に差がなくなり、日本産と中国産の差がなくなりました。「これは会計業務でも同様です。高機能な会計システムによる情報のデジタル化により、情報を作るだけの仕事の価値が大幅に低下したのです」と、金子氏は訴えます。
経理部門に求められているのは、…
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