オービック 情報システムセミナー 2011年夏 開催レポート 経営課題を強みに変える。攻めのイノベーション。 経営力強化で活路をひらく。

情報システムセミナー[2011年 夏] 基調講演(8) クラウド クラウド時代のERP
〜どのように検討し評価していくべきか〜

今後、市場規模を拡大していくであろうクラウドサービス。現状では、業務システム全体が対象となることはまだ多くありませんが、企業での検討機会は確実に増えてきています。このセミナーでは、今後、企業がクラウド時代のERPを、どのように検討し評価していくべきかを解説しました。旬な話題だけに、朝一番の講演にもかかわらず大勢の方が会場に詰めかけました。

2011年6月10日(金) 東京会場

C11
9:30-10:45
クラウド時代のERP
〜どのように検討し評価していくべきか〜
浅利 浩一 氏
株式会社 アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト

クラウドへの投資や利用状況はどう進んできているか

浅利氏はまず、ITR社調査による統計グラフ「2011年度に重視する IT動向」から説明に入りました。それによると、最も重視するのは「IT基盤の統合・再構築」で34%。これにともない2位には「仮想化技術の導入」が入っています(32%)。また、「IT基盤の統合・再構築」は2013年には72.1%と大きな伸びを示すと予想されます。

この「IT基盤の統合・再構築」および「仮想化技術の導入」に直結するのがクラウドです。そのクラウドには大きく以下の3つの種類があります。

  • SaaS

    仮想マシンとOSやミドルウエア、アプリケーション基盤、アプリケーションを提供。かつてASPと呼ばれたサービスで、カバーできる範囲が広がっています。

  • PaaS

    仮想マシンとOSやミドルウエア、アプリケーション基盤を提供。アプリケーションだけは自社で用意したい企業には適しています。素早い構築が可能です。

  • IaaS

    仮想マシンを提供します。バックアップなどに利用されています。

「しかし、中には従来からのサービスを化粧直ししただけの、便乗クラウドも多いので注意が必要です。また、アプリケーションである以上、ユーザーに構築責任があり、内部統制上の責任があることを忘れてはなりません」と、浅利氏は呼びかけました。

クラウドの動向

クラウド市場は大きく伸びています。中堅規模のお客様も検討しており、100億以上1000億未満の企業であれば、半分は導入しています。分野では「電子メール」「情報共有・ポータル」「スケジュール共有」といった、コミュニケーション/コラボレーションの領域に属するものが上位を占めています。

その一方で、不安もあると浅利は説きます。クラウドに不安を持つと答えた人のうち、約64.0%が「社外サービスのセキュリティ・レベルが分からない」ことに不安を抱いています。次いで、「自社以外のデータセンターに自社情報を保管すること」「サービス提供業者の事業停止や倒産」「緊急時でも自社でサービス復旧ができない」という回答が目立っていました。

アナリストである浅利氏の、調査データを元にした説得力ある内容が展開されていくにつれて、目を凝らしてグラフを見つめる方が増えていきました。

ERPにおけるクラウドの課題はなにか

では、クラウドを通じて基幹システムとなるERPはどれほど利用されているでしょうか。これもグラフで示され、2008年度は5.3%、09年度は6.3%、10年度は6.5%の割合。まだ圧倒的にパッケージが利用されていることが紹介されました。

その少ないERPのクラウドですが、どのような業務で利用されているかというと「人事・給与」が大半を占めています。2008年度は79.6%、09年度は77.8%、10年度は75.9%の割合です。「特に就業管理は独立性があって、外部サービスを利用しやすいという要因があります。実際ASPで利用していた企業も多くありました」(浅利氏)。

これからも分かるように、現時点ではクラウドは万能視されていません。基幹業務システムのように長く使い続けるアプリケーションでは、慎重な適否の判断が必要です。

クラウドに不向きなものは「高性能・高可用な大規模本番システム」「OLTP型(高スループット)アプリケーション」「マルチテナント化できないアプリケーション」「機密性が高いアプリケーション」などです。
また、複合性の高い業務で処理量やデータ量が多いとクラウドでのサービスは難しくなります。「クラウドの導入に合わせて、従来のプロセスを見直し、単一プロセスにするという改善も考えられます」と浅利氏は提案します。

ERPのクラウドをどのように検討し評価していくべきか

クラウドの導入に当たって、求められるのが「アプリケーションの棚卸し」です。現在どのようなアプリケーションを利用しているかを一覧、すなわち「可視化」します。このような整理を踏まえ、機能要件や非機能要件を見直し、可能性を探っていきます。この際、エンド・ツー・エンドで業務の流れが鳥瞰できる一覧にすることが重要で、設計よりではなく経営者や業務担当者視点のドキュメンテーションでなければいけません。

この一覧を元に、自社の特性や目指すべき姿を見据えて導入方針や導入範囲を決定します。具体的には、まず、アプリケーションの分類(アプリケーションをサブシステムレベルの粒度で切り分けて分類)と組織の分類(事業部やグループ会社を事業特性やIT要員のリソース、IT運営の個別性で切り分けて分類)をします。

次に、迅速な展開・撤退、納期、初期コスト、費用の変動費化、ROI、業務プロセスの整流化・並列化、セキュリティ、アクセス管理/権限など、クラウド推進要因と導入範囲を検討します。
そして、外部サービス活用可能性を検討し、これが高いのであれば、プライベート・クラウドあるいはパブリック・クラウドが考えられます。逆に低いのであれば、自社個別運用やホスティング/SaaSなどを比較検討します。

最後に浅利氏は「自社のクラウド推進要因と導入範囲の見極めが重要であり、そのために自社の業務やシステムの可視化を実施してみましょう」と訴え、講演を締めくくりました。

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