迫り来るIFRSへの対応が求められる中、「GAP分析を始めたいが、何から手をつけたらいいのかわからない」「GAP分析を始めたが量が多すぎて進まない」といった悩みを多くの方から伺います。本セミナーでは、先行企業の財務諸表を参考としつつ、Goalアプローチという手法を紹介。逆転の発想ともいえる斬新なアプローチに、多くの方がメモを取りながら聞いていました。
大手商社などを中心に、IFRSの導入事例が雑誌などで取り上げられるようになりました。これら先行グループが通常採用しているのが「GAPアプローチ」という手法です。GAPアプローチは、GAP分析から始まり、調査分析→導入→維持改善へと進みます。手法としては「非常にロジカルで実現できれば美しい手法です。各ステップを完全に行えれば後戻りもありません」と、GAPアプローチのメリットを最首氏は認めます。しかし、GAPアプローチにはある限界が存在すると最首氏は指摘します。
GAPアプローチには「トップによるリーダーシップ」「全社的な協力体制」「リソース(資金&人材)豊富なプロジェクト体制」という前提条件が不可欠で、いずれかが欠けても手順が滞ることになます。
トップによるリーダーシップがないと、プロジェクトリソース(資金・人材)が限られますし、全社的な協力も得にくくなります。プロジェクトリソースが限られると、GAPの判断困難、pending事項増加、to-doが山積み、全社的な協力がないと、GAP判断における情報集約が不十分…という具合です。
「GAPアプローチを採用したものの、この要素が整わず、ペンディング事項が山積になってしまうという相談が非常に多いのが現状です。そんな場合私はもう1つのアプローチをアドバイスしています。それが今回ご紹介するGoalアプローチです」と最首氏は語ります。
Goalアプローチは直接ゴールを目指すアプローチで、「現状からの最小変更」を原則とする方法です。成果物に向かって一直線に進み、実践を通して次のステップへの条件を整えていきます。
この手法では、まず「自社向けの開示ドラフト」を作成します。そこで、自社への影響範囲の概要をつかみ、開示に必要な範囲で会計方針を策定します。この手法なら、リソースは少なくても始めることが可能ですし、プロジェクトの進捗に応じて徐々に他のメンバーを巻き込んで進めることができます。
最首氏は両方式の特徴を比較し、「GAPアプローチとGoalアプローチは、適合する状況がまったく違います」と強調。そして、予備校における学生のタイプ別の試験対策に例え、わかりやすく説明しました。
Goalアプローチは4つのステップで展開します。
IFRSでは開示ドキュメントの量が増えると不安に感じている方が多いようです。しかし、最首氏はIFRS開示ドラフトやHOYA株式会社のIFRS財務諸表を例に、「会計方針の記載は絞ることができますし、自由記載に見えるところも書き方は実は決まっています」と指摘します。
「会計方針がいろいろあるように見えますが、実は選択の幅はあまりありません」と一覧のスライドを示しながら、最首氏は解説しました。
「GAP分析で厳密にやろうとすると変更の『余地』は数え切れないほどに見える場合もあります。しかし、すでに適用した企業が実際に変更を行った項目はそんなに多くはありません」と、最首氏はHOYA株式会社の例で詳しく説明しました。
そしてIFRS開示直前の時期においては最終段階として、自社用の記載の検討を行うことになるとの説明がありました。
引き続き、問い合わせが多い2つの重要項目「遡及適用」「重要性の判断」について、詳細な解説がありました。
基本的にIFRSは完全遡及ですが、例外もあります。「遡及適用が禁止されているもの(全4項目)」「任意的例外処理事項 選択することで簡便的な処理ができるもの(全16項目)」です。しかしながら、使えるものと使えないものがあり、最首氏は、HOYA株式会社の例で具体的に説明しました。
さらに、行うべきでない会計方針の変更のパターンもあり「固定資産の取得原価の範囲がIFRSと日本基準と微妙に異なるとの指摘が一時ありましたが、これがどんな帰結をもたらすか理解している方はあまり多くないのではないでしょうか?」と、問いかけます。そのような変更を行った場合、初めからその範囲で会計処理がされていたかのように処理をすることになりますが、そもそもそれは実務的に可能なのでしょうか。減価償却への影響は、原価計算にも影響しますし、利益剰余金の修正と棚卸資産の金額の修正が必要になります。最終的に「みなし原価」に逃げるか、「実務的に不可能な場合」という規定を用いるしかなくなる可能性が高いと、最首氏は語ります。
IFRS概念フレームワークは2つの利益「投資家の意思決定のために正確な情報を提供する利益」と「厳密な会計処理による実務コストを削減する利益」を勘案し、「重要性」の設定が求められます。ここでも最首氏は具体的な例を示し、「投資家の意思決定は基本的に『企業価値の評価』を通じて行われるので、そのプロセスに沿った検討が適切でしょう」と説明しました。
最後に最首氏は「GAPアプローチが唯一の方法ではありません。Goalアプローチで最小変更を目指し、重要性概念をフル活用しましょう!」と訴えました。
差し迫ったIFRSへの着手。参加者の熱気が伝わってくるセミナーとなりました。
“IFRS・国際財務報告基準(国際会計基準)の対応”は、経営基盤を強化する好機。
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