オービック 情報システムセミナー 2011年夏 開催レポート 経営課題を強みに変える。攻めのイノベーション。 経営力強化で活路をひらく。

情報システムセミナー[2011年 夏] 基調講演(2) 人事管理 <多様化する従業員を束ね試練を越える>
部下を育て、組織を活かす、はじめての『上司道』

市場が成熟し競争が熾烈化するなか、働き方や雇用形態が多様化し、経験則と暗黙知だけで上司は務まらなくなっています。組織を束ねるリーダーには、真剣に従業員と向き合い、チームでのイノベーションを起こすことが迫られます。本セミナーでは、新しく組織をまとめる<新>管理者向けに、部下の育成や組織作りなど、これからの上司のあり方について解説しました。前川氏ならではの鮮やかな指摘に、苦笑いする参加者も見られました。

2011年6月8日(水) 東京会場

A33
13:00-14:15
<多様化する従業員を束ね試練を越える>
部下を育て、組織を活かす、はじめての『上司道』
前川 孝雄 氏
株式会社 FeelWorks 代表取締役

なぜ「はじめての上司」はつまずくのか

「そもそも、上司となる方は個人のプレイヤーとして優秀な方なのですが、なぜか上司になるとつまずきます」と、冒頭で指摘する前川氏。そこには5つの落とし穴があり、以下の順で発生するといいます。

  1. 隘路に入り込む。
  2. 批判を否定的に受け止める。
  3. 威圧的である。
  4. 拙速に結論を出す。
  5. マイクロマネジメントに走る。

「優秀なプレイヤーほどこのパターンに落ち込みます。がんばればがんばるほど、あせればあせるほど結果を出せません」と、前川氏は話します。

上司は情熱を持って部下を育てたいと考えていても、会社に求められる業績と人材育成にかかる時間軸が異なり、うまくいきません。また、自分を基準に部下を評価するため、部下を追い詰めて論破して窮鼠(きゅうそ)をたくさん作ってしまうケースも見られます。

現在、組織は元気な男性中心で働く職場から、多様な人が助け合って働く職場へと変わっています。このパラダイム転換が困難になっているのです。

そもそも「上司になる」とはどういうことか?

上司になるということは、プレイヤーからマネジャーへと変わることであり「自分の業績は、部下の仕事の総和となります。このことは当たり前なことですが、短期成果を追うなかで忘れがちではないでしょうか」(前川氏)。

上司の仕事は、組織全体の成果の向上にほかなりません。現場上司が果たすべき仕事は部下1人1人の適性を踏まえて役割を与え、育てることにあります。チーム力を高め、個人では達成できない成果を導き出すのです。小手先のテクニックだけでは上司は務まりません。「時代も環境も異なってきています。上司は確固とした『指導理念』を持たなくてはいけません」と訴えます。

上司と部下は視界が異なります。時間軸で見れば、上司の視界は遠くまで及び、部下の視界は目先にとどまっています。空間軸で見れば、上司の視界は経営環境まで含めた広範囲なものであり、部下の視界は仕事回りに狭い空間にとどまっています。このような部下のモチベーションを維持するため、途方もなく先の大きな目標を与えても、見上げるだけで終わってしまいます。「3割背伸び程度で届く、小さな目標の階段を用意し伴走しましょう。そして、1人ずつの成長サイクルを踏まえて育成しなければなりません」(前川氏)。

また、部下育成のコンセプトは「好奇心」を喚起するGPSが有効です。Gはゴール(目的と手段)、Pはポジティブ(良いところを見つけて伸ばす)、Sはストレッチ(OBゾーン・視野を広げる)ことです。

成果を上げるための人と組織の動かし方

最近、仕事を「買う」人たちが増えています。誰かの役に立つという手応えが欲しくて、休日に休みを返上してボランティアに打ちこむ人が多くいます。普段の仕事に意義や意味を感じていないからかもしれません。「組織作りには、このような方々が望むような『情熱ビジョン』が必要です。目先の自分の損得でなく、顧客や社会に貢献するための志・ビジョンを持ち行動し続けることが大切です」と、前川氏は語ります。

会社はビジョンとミッションに基づく組織であり、仕事はそれを実現するための手段です。そのため、短期の業績結果ではなく、長期視点で「プロセス」「原因」を意識させることが重要となります。「業績ばかりに関心を寄せては、人は付いてきません。上司は部下の人となりに興味を持ち、部下のことを他人事ではなく『自分事』で語りましょう」と、前川氏は訴えます。例えば、「残念だったなあ」ではなく「悔しいなあ」と語りかける、「その案でいいと思うよ」ではなく「その案、おもしろそうだな」と表現するのです。

会社の上層部と組織をつなぐ役割の果たし方

引き続き前川氏は上司の役割を解説します。まず、経営者と部下の間にあって、伝書鳩になってはいけないということ。現場に経営陣の言葉を伝えるときは、部下に近い言葉に翻訳。現場の言葉を経営陣に報告するときは、経営陣に近い言葉に翻訳する、意志ある翻訳エンジンにならなければいけません。

次に、1つ上のポジションでものを考える癖を持つこと。「みんなが意志を持って。もう1つ上のレイヤーの立場でものを考えるようにしましょう」(前川氏)。
そして、ミスやトラブルなど有事があったときこそ、組織として対応すること。安易に一線を越えるのはNGです。

さらに、前川氏は上司ならではの3つの醍醐味を紹介します。1つ目が、部下が一皮むける瞬間に立ち会える感動。2つ目が、教える方が教えられるより、学んでいるということ。3つ目が、1人ではできない大きな仕事ができるということです。

「リーダーの心得は、期待し、任せて、応援すること。そして最後は責任を取ることにあります」と最後に前川氏は会場に呼びかけました。説得力ある内容に、多くの方がかみしめるように聞いていました。

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