オービック 情報システムセミナー 2011年夏 開催レポート 経営課題を強みに変える。攻めのイノベーション。 経営力強化で活路をひらく。

情報システムセミナー[2011年 夏] 基調講演(1) 管理会計不況下でも「減収増益」を目指す管理会計とは?
-決算書中心・対前年比中心思考からの脱皮を目指して-

リーマンショックによる厳しい経済情勢に加えて今回の大震災。これから続くと予想されるマイナス成長の中、従来の企業経営とは異なる発想の転換が必要になっています。5年先、10年先の舵取りをどのようにすればいいのか。今後の経営環境に危機感を覚えながら、多くの人が真剣に聞き入っていました。

2011年6月8日(水) 東京会場

A31
13:00-14:15
不況下でも「減収増益」を目指す管理会計とは?
-決算書中心・対前年比中心思考からの脱皮を目指して-
田中 靖浩 氏
公認会計士

マイナス成長に入る日本経済

セミナーの冒頭で、田中氏は参加者に2問のクイズを出しました。小学生でも解けるような、簡単な数列の問題でしたが、田中氏は誰もが想定しなかった答えを示しました。「これまでの数字の並びから見て、次の数字を予想するのは簡単です。科学も今までの事象から未来を予想させるために発展してきました。しかし、自然は必ずしもその通りにはなりません。その通りになると考えるのは、人間の『願望』に過ぎません」。

企業会計もこれと同じで、従来の延長上と考え、それ以外を「想定外」とします。例えばリーマンショックも震災も想定外であり、だからパニックが起き、現状の業績の悪化も想定外な外部要因のせいにしてきました。「しかし、どうでしょうか、もしリーマンショックも震災もなかったら、日本経済は順調に成長していましたでしょうか」と、田中氏は問いかけ、1956年以降の経済成長率のグラフを示します。

そのグラフで鮮明となるのが、日本経済は大きく3期に分けられるということ。1期目が1956年からオイルショックの74年まで。ここは9%超の成長率がありました。2期がバブル崩壊までの4%。そして3期がリーマンショックまでの1%強の成長率です。「この傾向からすれば、たとえリーマンショックや震災がなくても、日本の4期、すなわち今後15年はマイナス成長期に入ります。プラス成長だったこれまでとは異なる、まったく別の考え方が求められるのです」と訴えます。田中氏の迫力ある主張に、受講者の中には背筋を正す方さえ見られました。

「これまで」と「これから」

これまでのプラス成長時代はスケールメリットに支えられていました。会社の規模を大きくし、売上を伸ばすことで成功してきました。
例えば、大量に作って大量に販売することで、製品単価が下がります。そうすることで、企業の利益が増加し、これにつれて国への税収も増加し、雇用も促進されます。市場が拡大し、大量消費され、大量生産・大量販売が可能となります。このようなサイクルが回って日本の成長率は右肩上がりに伸びてきたのです。

ところが、このスケールメリットの戦略がマイナス成長時代には通用しません、と断じる田中氏。ここで、21世紀型スケールメリットの成功例の実例を示します。日本を代表するアパレル企業や家具メーカーの意外な実体に驚かされるとともに、「今後、このビジネスモデルを真似することはできません」との田中氏からの指摘に、うなずく人も見られました。

そして、田中氏は「これまで」と「これから」を切り分けましょうと呼びかけます。これまでのスケールメリットは、これからのスケールデメリットになります。規模が大きいと、急に方向性を切り替えることができませんし、縮小も撤退も困難です。社長の決断1つで即応できる、小さな会社の方がむしろ有利なのです。

「量の経営」から「質の経営」へ

「これまで」と「これから」で、経営の観点で求められるのが、「量」から「質」への転換です。
売上は「単価」×「個数」で計算され、それから原価を引くと利益が算出されます。「質の経営」とは「単価」を上げて「数量」を下げることです。高単価戦略が求められているのです。そのわかりやすい例を田中氏は示します。

例えば、10万円×10個で売上100万円。原価が70万円で(7万円×10個)で利益が30万円の事業があったとします。
では、低成長となって、ものが売れない時代になったとします。多くの企業では「値段を下げて販売数量を維持しよう」と考えるのではないでしょうか。
ここで、単価を1万円下げて9万円としたとします。そうすると、売上は90万円(9万円×10個)。原価は変わらず70万円。利益は10万円ダウンの20万円になります、これでもし販管費が25万円だったとしたら、5万円の赤字です。
一方、価格は維持して数量をダウンさせる道を選択したとします。売上は同じ90万円(10万円×9個)ですが、原価も下がり63万円(7万円×9個)。総利益は27万円で、販管費を引いても2万円の黒字になります。

「いかがですか。マイナス成長の時代に従来のように売上だけで考えてはいけません。売上で考えるのはプラス成長の時代だから有効だったのです。これからは単価と数量を分けて考えてください」と、田中氏は語ります。

財務会計から管理会計への脱皮

売上からコストを引いて利益が出ると考えてきたのが「財務会計」です。そして、これからは単価と数量に分解して考える「管理会計」思考が必要です。時代が変わり、財務会計から管理会計へと見方の変化が求められています。

「財務会計は全社全体で判断し、単年度で数字を追いかけます。しかしながら、全部門の黒字を追いかけることが必ずしも正しいとは限りません。将来のことを考えて新規事業を始めるのならば、最初は赤字で当然です。黒字部門と赤字部門の健全なバランスが大事なのです」と田中氏は語りかけます。

最後に管理会計の神髄を田中氏は「必要な人に、必要な時に、必要な情報を提供するための仕組み」と訴え、セミナーを終えました。

企業経営は本気で頭を切り替えなければならない、そう考えさせられるセミナーでした。

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