三菱重工業社員の勤怠、給与計算などの業務を行いながらグループ会社に対する人事給与システムの再構築支援を実施しているMHIパーソネル。同社では、OBIC7人事給与システムをグループ全体で活用すべく、ASP型の導入を推進しています。ASP型人事給与システム活用について、同社代表取締役の野村氏に役立つ選定ポイントやASP運用のコツなどをお話しいただきました。
三菱重工業の人事部門の一部を分社化して設立されたMHIパーソネルの事業概要について冒頭で紹介した野村氏は、与えられたミッションには大きくは2つの柱があると語ります。
「三菱重工社員サービスとしての勤怠や給与、旅費精算、福利厚生関係など人事業務におけるノンコア業務を遂行することと、国内グループ会社に対する人事給与システムの再構築支援や給与計算・旅費精算を受託する業務です。特に、13カ所に点在する事業所ごとにシステムが異なっていた三菱重工業では、業務の簡素化や標準化とともに、SAPを中核とした人事勤労システムを構築しています。」
国内グループ会社対応としては、注力しているのが、給与計算業務の受託による支援や人事給与システム全般の構築支援など、グループ会社の業務効率化を支援する業務です。「連結経営や連結決算など連結で企業を考える動きが加速する今の時代だからこそ、グループ全体での情報共有や実務面での指導・支援が求められている」と野村氏は指摘します。グループ会社には人事やシステム面での専門家を潤沢に配置する余裕もなく、法令改正など頻繁に行われる場合の対応など、業務の専門性が問われる場面も。そこで、人事勤労のスペシャリストとしての同社が、グループ全体を強力に支援していく必要があるのです。
そのグループ会社支援の一環として行っているのが人事給与システムの再構築であり、ここで活躍しているのがOBIC7ですが、もちろん導入にあたっては、端数計算の処理など機能面を十分に比較しながらパッケージ製品を選定していったと当時を振り返ります。
「実は、数万人規模に及ぶ三菱重工業本体はSAP導入が適していましたが、およそ120社あるグループ会社は、社員数は数十人から多くても一千名規模の企業が中心です。給与体系がシンプルであればSAPをグループ全体で導入することも可能ですが、同グループの場合は会社によって人事制度や給与規則が大きく異なっており、SAPで120社分のカスタマイズを行うのは困難だと判断しました。そこで、コスト面や構築期間の短縮が同社にとって魅力的であり、企業規模にもマッチしていたのがOBIC7でした」
SEが給与の仕組みについてよく学んでおり、パートナーとしての信頼性も高く、グループ会社への展開についても安心できたと野村氏は評価します。
グループ会社へのASP展開については、自社で導入するよりも初期費用が大幅に抑えられるという魅力が大きいと野村氏は語ります。また、システム改修対応が一元化できることもASP導入のメリットに挙げており、トラブル発生時の情報共有化も大きなポイントに。これらのメリットから、ASP型によるグループ展開を決定し、システムの老朽化や保守期間の終了等のタイミングに合わせて順次展開していったといいます。平成18年から展開を続けており、おおよそ3分の1が稼働もしくは検討段階に入っている状況です。
実際のグループ会社向け標準モデルとして、野村氏は全体像を説明します。
「人事情報システムおよび給与情報システムの基本システムとともに、グループ会社に必要な各種オプションを用意しています。また、連結決算を考慮して、SAP R/3会計システムとアドオンによる連携処理が可能となっています。なお、就業管理項目が300以上あるなど三菱重工業およびグループ会社の就業体系が複雑なため、就業情報システムのパッケージは導入せず、三菱重工業の勤怠システムやアマノの勤怠システムとの連携を行っています」
ネットワーク構成的には、関東にある三菱重工業のデータセンターにサーバを置き、重工LANを経由して各グループ会社が利用できるようになっています。関東以外の別事業所にバックアップサーバを配置する予定となっており、万一の災害対策にも十分配慮された環境となる予定です。
ASP型システム導入のポイントとして、野村氏はユーザーサイドの体制や役割分担などをしっかりと決め、特にシステム開発部門と業務担当部門双方で構築体制を確立する必要があると説きます。
「一番大切なのは、プロジェクトリーダーとなる旗振り役をしっかり決定すること。『一番の敵は身内にある』という表現があるように、現場は新しいシステムを受け入れずに軋轢が生まれることも多い部分です。旗振り役が現場との軋轢を解消するために『なぜこのシステムを導入するのか』をきちんと説明し、現場の理解を得ていく作業が重要なのです。また、人事勤労部門以外に人事情報を活用している場面もあるため、影響度合いの分かるシステム担当者が必ず必要になります」
また、ASP型のメリットとしては、サービスインまでの構築期間を大幅に短縮できる部分がありますが、会社によっては専任者を置けずに現状業務と兼任でプロジェクトを遂行せざるを得ない場合もあります。この場合も、旗振り役がきちんと調整しながら、初期の業務分析およびフィット&ギャップを、きちんと行うことが何よりも重要だと野村氏は力説します。
「ほかにも、年末業務など担当者の業務への影響も加味しながらサービスインの時期についてもしっかりと見極めるべきです。さらに、人事給与の基礎は最低限でも理解できるなど、業務の分かるシステム開発担当をベンダー側に見つけられるかどうかも、プロジェクト成功の鍵を握るでしょう」と野村氏は指摘します。実体験を交えた構築のポイントに、多くの方が熱心に耳を傾けていました。
最後に、ASP型活用のメリットを紹介した野村氏は、今後はさらに利用企業が増えたあかつきには、人事給与システム利用連絡会のような場を設けて、オービックとの密な情報共有基盤も構築したいと語ります。給与が正しく支払われることが会社と社員の信頼関係の基本だと考えており、OBIC7が担う役割は大変大きなものです。これからも、システムを活用して効率化を追求し続けていきたいと締めくくりました。
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