将来の企業成長を見据え、転換期に備える 変化の先の勝機をつかみ取る。 オービック 情報システムセミナー 2011年新春 開催レポート

情報システムセミナー[2011年 新春] 基調講演(2) IFRS仕訳事例までご紹介!
IFRS適用が業務に与えるインパクト

IFRSへの移行を見据えて新たな情報投資を検討している企業も多く、中期的な視点に立って業務システム基盤の方向性を整理する時期に差し掛かっています。そこで本日は、IFRSの影響を考慮しながらグループ全体での経営管理に役立つオービックの業界・業務別ソリューションをご紹介していきます。

2011年2月8日(火) 東京会場

A33
13:00-14:15
仕訳事例までご紹介!
IFRS適用が業務に与えるインパクト
尾田 友志 氏
マネジメントテクノロジーズ,LLC代表

そもそもIFRSとは何を目的にしているのか

まず、IFRSの特徴を端的にいうと、IFRSは株主持ち分を明らかにしようとする制度であり、投資家が投資をした結果の利益がどのくらいあるのかを表示するものだということを認識すべきだと尾田氏は力説します。
「投資家への情報提供が主な目的であり、特定の法律を前提にはしていません。『あくまで会計理論の面から見たときに、会社の利益や株主持ち分がどのくらいあるのかを示す』のがIFRSです。また、連結会計や時価に合わせた公正価値に重きを置く会計基準であり、期末ごとに今の会計処理が業務実態に合っているのかどうかをチェックする必要があることも、大きな特徴の1つに挙げられます」

具体的に見ると、減損や棚卸資産の評価損の戻しを決算日ごとに実施することで複数帳簿が発生したり、業務の実態に合わせた実質重視および投資家への情報の提供となるがゆえに、収益認識のための仕訳が複雑になったりなど、IFRS特有のさまざまな相違点が挙げられると尾田氏は指摘します。また、業務の実態に即した形になるため、管理会計をベースに財務会計が存在することになること、過年度遡及対応などが求められ、会計データの長期保存が必要になることも強調しました。

一方、提出書類については、2010年3月期の年度末よりIFRSを適用する場合、前期分については、期末時点での財政状態計算書や2008年4月から2009年3月の包括利益計算書、そして持ち分変動計算書、キャッシュフロー計算書が必要です。また最初だけ期首の財政状態計算書も必要になるだけでなく、日本基準との金額差異をはっきりさせるための内訳にあたる調査表なども求められるため、適用時点では非常に大変な作業が必要になることが想定されると尾田氏は危惧します。IFRSは開示の部分が特に重要となり、中でも注記をしっかりと行うことが大切です。

販売管理システムにおけるIFRSと日本基準における相違点

次に尾田氏は、影響度分析を実施する上で役立てられるよう、販売管理システムにおける会計基準の相違点を、日本基準とIFRS、US GAAPという3つの視点で整理します。「実は、IFRSの基準書は原理原則が書かれている部分が多く、ある意味抽象的な記述が多いもの。実務的な部分ではアメリカの会計基準を準用してよいといういるケースが多く、きちんとUS GAAPもつかんでおく必要があります。ただし、新しく規定されているIFRSの基準は、細かく規定されているものも増えてきています」

IFRSを理解する上で重要なのは、IFRSの売上計上時点は「権利とリスクが移転したときとされていることです。ここでは在庫リスクが取り上げられやすく、「返品が習慣上よく行われている業態の場合は、仕入売上が認められないことになってしまう」と尾田氏は指摘します。また、収益認識が出荷基準から検収基準に変わることも大きなポイントです。さらに、携帯電話のサービスやソフトウエア、フランチャイズフィーなど、日本基準との相違点で注意すべき具体的なポイントを、事例を織り交ぜながら分かりやすく説明いただきました。

例えば、製品本体とともに設置費用やアフターサービスが伴う実例を軸に、これまで取引を一括で行ってきた日本基準とは異なるIFRSの考え方を尾田氏は次のように説明します。
「IFRSにおける物品販売取引では、商品・製品の販売とともに、サービスの提供やアフターサービスなど事後的サービスの提供、割賦販売による利息、手数料、消費税など構成要素別に分解する必要があります」
これら仕訳に直接影響する部分について、エアコンの無料アフターサービスや、みなし金利の設定が必要となる割賦販売など、従来の会計処理とIFRSでの会計処理とを具体的な数字を踏まえて比較しながら丁寧に解説。システム要件では、特に商品や価格関連マスタに詳細な設定ができる仕組みが求められることを尾田氏が指摘すると、商品マスタ例が示されたスライドを食い入るように見つめるお客様が数多くいらっしゃいました。

IFRSにおけるポイント制度の取り扱い

POSレジに関するシステムについては、特にポイント制度についての会計基準の相違点を尾田氏は説明しました。IFRSでは、商品を販売した時点で「商品売上相当部分」と「ポイント部分」に区分し、ポイント相当額を繰延集計(前受収益)に計上することになります。ただ、有効期限の有無や自社発行ポイントか交換ポイントなども細かく考慮する必要があると解説します。アフターサービスについても具合的な計算例を紹介し、IFRSにおける仕訳や販売店とメーカーが行う処理の違いなど、より実態に即した例を解説していただきました。

最後に尾田氏は、「収益認識基準によって会計処理が変わるため、システムが大きく変更を余儀なくされることはもちろん、販売管理システムのマスタ項目や他国よりも複雑な日本のポイント制度への検討、そして取引形態については仕訳を起こして検討する必要がある」ことを指摘して、セミナーを締めくくりました。

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