経営コンサルタントとして活躍されている小宮氏に、「実践すべき正しい経営」とは何なのか、リーダーが身に付けるべき経営の本質について、経験則を交えながら熱く語っていただきました。独特のテンポで語られる小宮氏のお話に受講者はどんどん引き込まれ、満員の会場が熱気に包まれていきました。
冒頭で小宮氏は、経営の本質は「企業の方向付け」「資源の最適配分」「人を動かす」の3つに集約されると語ります。その具体的な例として、採用に臨む学生に向けて「いい会社の見極め方」についてアドバイスした際の「先輩や面接官にするべき3つの質問」を中心に、経営の本質について分かりやすく解説していきました。
「まず、『御社の一番大きな取引先はどこですか?』と質問しましょう。この質問で、一番大きな取引先に対して『さん付け』ができているかを見極めることです。お客様を第一に、というスローガンを掲げている企業は多いものの、学生に対してはつい本音が出やすいもの。それができていない企業では、この供給過剰の時代に生き残れるわけがありません」と小宮氏は一刀両断しました。
では、どうすれば顧客志向の行動が取れるようになるのか。「それは、幹部である皆さんがまず率先して行動すること」だと会場の受講者に訴えます。
「頭のいい人が陥りやすいのが、自分が実践していない理屈を人に教える、つまりティーチャーになってしまうこと。実は、背中を見せて行動することでリーダーにならないといけないのです。人がついてくるかどうかは、先頭に立って行動している人がいるかどうか。だからこそ、経営者やリーダーには覚悟が必要なのです」
しかし、正しくできていない人にはきちんと言い含めることも重要で、経営者やリーダーは、部下に厳しく忠告する立場であることを認識すべきだと指摘します。厳しさの裏には優しさがある。リーダーにはそれが必要になります。
ただ、部下に厳しく忠告するためには、相応のエネルギーや勇気が必要です。それはどこから湧き出てくるのでしょうか。小宮氏いわく「勇気やエネルギーは信念から出てくる」と語ります。信念があれば厳しいことも言えます。ただ、それには正しい信念を持つことが重要で、その判断基準は昔から読み継がれている本の中に真理が隠されているといいます。もし古典が難しければ、松下幸之助氏や稲盛和夫氏の本なども読むといいと、小宮氏が推薦する書籍を紹介すると、一生懸命にメモを取る姿が会場のあちこちで見受けられました。
先輩や面接官に聞くべき2つ目の質問は、「御社のビジョンは何ですか?」だと小宮氏はいいます。明文化されていなくても、企業のバックボーンに何があるのかを確認することが重要です。企業の方向性は戦略であり、例えば徹底した顧客志向の企業が顧客が求めているものを見つけ出すためには、外部環境や競合情報も含めて自社の強みを分析することで導き出すことができます。しかし、もっとも根本にあるものが企業の「ビジョン」や「理念」なのです。
「このビジョンや理念が面接官を含めた全社員に浸透しているのかどうか。苦しくなったときに企業が頑張れるかどうかは、このビジョンがあってこそ」だと小宮氏は断言します。ジェームズ・C・コリンズ著の「ビジョナリー・カンパニー」でもビジョンの重要性を説いており、実際にビジョンを持った企業とそうでない企業を比べると、利益だけを追求した企業に比べておよそ6倍の投資効果を上げているというデータもあるそうです。
「3つ目の質問は『ルンルン気分で出社していますか』。ゴルフ場に行く朝や家族でディズニーランドに行く車内の気分などが“ルンルン気分”であり、その気分で会社に出社しているかどうかです」と小宮氏はいいます。面接官への質問の話題はいつしか会場への問いかけに変わり、会場のお客様が自問自答していました。また、小宮氏自身も多忙を極める毎日を過ごしていますが、仕事に出かけるときには「ルンルン気分」で事務所に向かうとのことで、四谷の駅から徒歩10分の間、小さな声で歌を歌っているか口笛を吹いていることを披露すると、会場は笑いの渦に包まれました。
では、どうしたらルンルン気分になれるのでしょうか。「人を動かす」という要素に通じる部分として、大リーガーのイチロー選手や長者番付の常連だった松下幸之助氏、稲森和夫氏を例に挙げながら、小宮氏は説明していきます。
「『私利私欲なく働かなくてはいけない』という言葉の本当の意味は、売上や利益を否定するわけではありませんが、売上や利益を目的に働くと仕事そのものが手段になってしまい、効率のみを求めてしまうことで仕事が荒れてきてしまいます。そのため、『私利私欲なく働かなくてはいけない』のです」と小宮氏は述懐します。そして、「売上や利益が出るくらいいい仕事をしてください」と付け加えることも忘れませんでした。
お客様第一を企業経営の目的にできる、そんな社風を作るためのヒントとして、小宮氏は褒めることが重要だと提言します。
「従業員をお金や地位で評価することは当たり前のことですが、それだけではお金や地位そのものが目的化してしまう恐れもあります。そこで単純に褒める、感謝するという行為が必要になってくるのだといいます。人は感謝されるとうれしいもので、また会社に行って頑張ろうと思ってくれる。だから、ルンルン気分で会社に行けるようになるというわけです」
学生が企業側への質問から“実践的な経営の本質をとらえる”という分かりやすい講義に、会場には共感の輪が広がっていきました。
フリーダイヤル0120-023-019(受付時間:平日9:00〜17:30)
情報システムセミナーなどのご質問・ご相談はお気軽にお問い合わせください。
メールにて情報を案内させていただきます。