情報システムセミナーレポート[2019年 夏] ERP デジタル変革の波に乗り「2025年の崖」を克服せよ!

2019年6月12日(水) 東京会場

B31
13:30〜14:30
デジタル変革に向けたIT戦略策定のポイント
DXレポート — ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開 —

鈴木 武佳 氏
KPMGコンサルティング株式会社 シニアマネジャー

「2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある」。経済産業省が2018年9月に公表した、我が国の情報システムの課題と展望を示した報告書「DXレポート」が産業界に衝撃を与えています。
DXは企業が将来の成長や競争力強化のために、デジタル技術を活用して、ビジネスモデルを創出、さらに柔軟に改変するデジタルトランスフォーメーションを指します。

ところが日本の多くの企業は改変が難しい旧来型の情報システムにとらわれ、新しい時代の波に乗れないでいます。このままではデジタル競争の敗者となるだけでなく、システムの維持管理コストや人材の負担が増大しシステムトラブルやデータ損失などのリスクにさらされ、システムが破綻します。こうした事態を回避し、競争の勝者となるため、「2025年までにシステムを集中的に刷新する必要がある」と報告書は指摘します。当セミナーでは、デジタル変革を効果的に推進するためのIT戦略策定のポイントについて解説します。
※DXレポートとは、経済産業省が我が国の企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現していく上でのITシステムに関する現状の課題の整理とその対応策の検討を行い、『DXレポート — ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開 —』として取りまとめ、2018年9月に公表した報告書。

インターネットアクセスは世界人口の半数超、IT投資が生き残りのカギを握る

KPMGと英Harvey Nashが共同で世界84ヵ国、総勢3,958人のITリーダーに聞くCIO調査は2018年度に、世界の人口が1998年の59億人から74億人に増える中で、インターネットにアクセスできる世界人口の割合が約4%から半数を超える54%に達し、過去20年でITの世界が一変した事実を示しました。過去1年のIT予算が「増加」または「現状維持」のどちらが当てはまるか聞いたところ、半数近くの49%が「増加」と答え、過去13年間で最も高い割合を示す結果となりました。世界のエクセレントカンパニーの多くが生き残りをかけ、ITへの多大な投資を加速させている現実がわかりました。

IT部門の人員が「増加」していると答えたリーダーも47%と過去最高に達する一方、「適正なスキルを備えた人材の不足が原因で変化のペースに対して後れを取っている」と答えたリーダーが3分の2近く(65%)を占めました。ITへの投資と人員が増えているのに優秀な人材は不足し、変化に対する後れというマイナスの結果をもたらしているわけです。

「今後1年間でアウトソーシング関連の支出増加を予定している」との回答は大幅に減少し、2008年の世界金融危機の後に見られた水準に近く、これまでで最も低い32%となったのに、それでは自社開発に力をいれているのかというと、「全社的なデジタル戦略がある」と答えたリーダーの割合は2017年度までの増加傾向から一転、減少となり、32%にとどまりました。3分の1の企業しかITを戦略的に開発、運用できていないのです。

先端IT分野への投資状況を聞くと、「大規模投資」はクラウドが34%と最も多く、成熟の程度が高まっています。AIは7%と低いですが、「計画中」はAIが29%で最も多く、これからAI投資が本格化してくると予測できます。

デジタル変革を妨げる課題を克服 新しい価値創造へ

鈴木氏はこうした調査結果を踏まえ、デジタル変革を妨げる課題として、

  • ① デジタル化に必要なデータが揃わない
  • ② デジタル化の対応にリソースが割けない
  • ③ デジタルの知見を有した人材が足りない

の3つを掲げました。

「デジタル化に必要なデータが揃わない」とは「データの収集と蓄積が不十分で、分析と活用の効果を発揮できない」(鈴木氏)ことにつながります。一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会が実施した「デジタル化の取り組みに関する調査2019」では「レガシー(旧来型)システムとのデータ連携が困難」と答えた回答者の割合は前回調査から13ポイントも上がって59%に達しました。現在のデジタル変革の波に現在のシステムでは乗れないのです。

デジタル化の必要なデータが揃わない

(出典 : KPMGコンサルティング株式会社)

2番目の「デジタル化の対応にリソースが割けない」とは既存システムが長年にわたる改変や部門ごとの開発で複雑化し、担当者でなければ運用もできないというブラックボックス化に陥っている現状を示しています。「システム部門は常に業務効率化とコスト削減の板ばさみで、基幹業務を支えるシステムの改善に頃倒。問い合わせや制度変更への対応など日々のやりくりに追われ、やがて保守切れとなり、運用に重大な支障をきたします。IT投資はまだまだ守りから攻めに転じることができないでいるのです」(鈴木氏)。ここで業務効率化とコスト削減を両立させ、システムの運用や保守だけでなく、会社全体の業務の標準化を進めると、IT投資を攻めのモードに切り替えることができます。

3番目の「デジタルの知見を有した人材が足りない」は、これまで蓄積したシステム技術ではデジタル変革に対応できないという現実を示しています。鈴木氏は「自社の業務特性を理解し、デジタル化時代に対応できる人材は内外ともに不足しています」と訴えます。一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会の調査では、デジタル化を推進する上での課題として「これまでとは異なるデジタル人材の確保」と回答した企業の割合は66%と3分の2に達しました。

システム部門でこれまで主流だった人材は「既存システムの効率化とコスト削減を目的とするIT活用がメインで、要件定義が明確でなければならず、確実性を重視。開発姿勢は基本計画から設計、プログラミング、テストと段階を経るウォーターフォール型の課題解決型」ですが、デジタル化によって必要になる人材は「価値創造を目的とするIT活用がメインで要件が不確実でも対応し、スピードを重視します。開発姿勢は変化に機敏に対応するアジャイル型」です。

DXでデジタル応用を全社レベルで推進

デジタルトランスフォーメーション(DX)では最新技術を活用できる業務やサービスが拡大します。ですからDXの推進は製品などの個別事業単位から全社レベルに引き上げる必要があり、既存システムの最適化とセットで推進するのが有効です。

デジタル時代のIT戦略の策定では、ビジネスとデータ、アプリケーション、セキュリティ&テクノロジーの4つを組み合わせた「エンタープライズアーキテクチャ」の考え方を用いて、全社レベルで全体最適のシステムデザインを定義します。「ビジネス」アークテクチャは経営戦略に基づき、デジタル化による新たなビジネスモデルと運用モデルをつくり、組織の機能やビジネスプロセスを見直していきます。新技術は組織内外の安全なデータ連係が低コストでできるブロックチェーン技術をはじめ、モノなどの状態に関するデータを自動的に高頻度で取得可能とするIoT、製品や試作品をオンデマンドで製造する3Dプリンター、AIによる自然言語処理、アプリケーションを超えてパソコン作業を自動化するRPA、視覚的によりリアルに疑似体験できるAR/VRなどそれぞれの効果を知り、自社のデジタル戦略で適用する領域を検討します。さらにそれぞれの新技術について、個人で対応できるパーソナライズが可能か、精度向上に役立つか、顧客の理解度や満足度はどうか、効率化につながるか、などの観点で評価します。

エンタープライズアーキテクチャの「データ」では「既存システムのデータを棚卸しして、重複データを徹底的に排除します。既存システムでよくある『欲しいデータを取り出せない』という事態をなくすためで、極めて重要な作業です」(鈴木氏)。そして新技術で生まれたデータ、たとえばIoTの普及で得られるセンサー情報や画像、動画のマルチメディアデータを取り込み、活用できるようにします。

「アプリケーション」は標準システムを活用し、徹底的な汎用化をはかり、活用範囲が限定される独自機能はできるだけ極小化します。「セキュリティ&テクノロジー」は自社の新技術採用基準を策定し、複数のクラウドを利用するマルチクラウドやIoTの普及、5Gの登場により急増する通信量やネットワーク経路への対応準備を進めます。手元のパソコンだけで作業するエッジからクラウドセンターまでネットワークデザインを構築します。

目指す新技術活用の全体像を実現するロードマップを策定

エンタープライズアーキテクチャを綿密に構築したあとは、実際の行動に移すロードマップを策定します。 経営戦略に沿って力を注ぐ事業を決め、最適化を段階的に進めます。これまでのコスト削減からデジタル変革へIT投資をシフトして、最新のデジタル技術をつかいこなすリテラシーを高めます。「捨てる事業を決めるなど厳しい選択が必要になります」(鈴木氏)

ロードマップは段階的なアプローチを採用し、チェックポイントや指標を設けて進行度を見えるようにします。重要なのはシステム部門が単独で旗を振るのではなく、経営陣の支援を取り付け、全社的な取り組みにすることです。新技術をはじめ、こうして蓄積されてくるビッグデータなどIT資産は、デジタル戦略との関連性やシステム化の必要性などの観点で評価、仕分けします。さらに既存システムの保守費、運用費とDX投資の経営資源の配分を明確にして、既存システムへの投資を圧縮し、DX投資への振り替えを計画的に実施します。

内外比率の計画的移行

(出典 : KPMGコンサルティング株式会社)

デジタル人材の育成では、個人の能力を再評価してDX推進のリーダーとメンバーを選抜、効果的なトレーニングを活用して、全社的な能力の底上げを図ります。教育プログラムはデジタル戦略に沿って、セミナー、集合教育など外部の教育サービスを活用しながら開発、展開することが有効です。クラウドや研修プログラムなど外部の活用は極めて重要で、「社内の人材はより付加価値の高い業務に従事し、高い専門性を必要とする業務は外部を活用する『内外比率』をきちんと計算した上で計画的に進めるのが最も望ましいでしょう」と鈴木氏は締めくくってくれました。既存システムを新しいシステムに切り替え、業務の標準化と共に、新技術を次々と導入し、最強のデジタル企業に生まれ変わっていく道筋が見えてきました。

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