情報システムセミナーレポート[2018年 夏] 会計管理 収益認識が変わる、新しい会計基準が与えるインパクト

2018年6月8日(金) 東京会場

D51
15:30-16:30
事例に学ぶ収益認識基準への対応
新しい収益認識基準が業務に与える影響とは

中村 亨 氏
コーポレート・アドバイザーズグループ 代表 / 公認会計士 / 税理士

2018年3月に「収益認識に関する会計基準」が基準化され、2021年4月1日以降開始する会計年度から強制適用となります。従来の収益認識は実現主義に基づきなされるものとされ、包括的な基準はありませんでしたが、新基準により収益認識はどのように変わるのでしょうか。また、業績や業務にどのような影響が及ぶかなどについて、事例を踏まえつつ、中村氏は、わかりやすく解説しました。

収益認識基準対応に向けた3つのフェーズ

中村氏は、講演の冒頭で「収益認識基準を難しく考えないでください」と呼びかけます。収益認識基準はIFRS15号の事実上の翻訳です。「翻訳のため難しい言葉もありますが、これにさえ慣れてしまえば、日頃から売り上げのことを考えている方であれば、難しいことではありません」(中村氏)。
また、強制適用に備えて、2018年6月から1年ごと3フェーズに分けて取り組むことを推奨しました。

フェーズ1 計画

網羅的に影響度の調査をします。あらゆる論点をピックアップし、監査法人と協議します。

フェーズ2 実行

計画フェーズに従ってシステムを改編し、マニュアルや契約書など各種文書を整備します。

フェーズ3 テストラン

システムや体制に問題がないか、検証の時期とします。

「通常であれば、新たな制度への対応は2年を標準としていますが、収益認識基準は3年が必要とお考えください。特に、子会社の多い企業は、早めに動くことをお薦めします」と中村氏は促しました。

適用開始に向けて

収益認識5つのステップ

講演は、中村氏がぜひマスターして欲しいという「5ステップ」の各ポイントの解説に入ります。ここで中村氏は事例として、機械の売買・据付・保守を含む契約の収益認識を示し、全体像を見せました。

5つのステップのイメージ 機械の売買・据付・保守を含む契約の収益認識

[ステップ1]の「顧客との契約の識別」では、機械の売買と据付、および保守(2カ月)の契約を結びます。[ステップ2]の「履行義務の識別」では機械販売と据付サービスは不可分であることから結合し、保守サービスは別と識別します。[ステップ5]が「収益の認識」。機械販売と据付サービスで800(売上時に履行義務が充足)、保守で200(売上後2カ月で充足)を収益と認識します。

[ステップ3]の「取引価格の算定」では合計の1、000を算定します。そして[ステップ4]が「履行義務への取引価格の配分」となります。 「従来なら保守も含め、さらにトータルで値引きした価格を収益としていました。しかし、新たな収益認識では単品として独立販売価格で配分します」(中村氏)。

この後、中村氏は各ステップのポイントを解説。とりわけ[ステップ2]の「履行義務の識別」では、病院建設とソフトウェア開発を例に履行義務の識別の考え方を解説。[ステップ3]では、事例をもとに算定方法を示し、[ステップ4]においても配分の事例を具体的に示しました。

業務に与える影響

引き続き、中村氏は新たな制度の影響範囲を一覧で示し、影響範囲の大きさを訴えます。収益の会計処理は原価の会計処理に直結しますが、これらは既存の業務処理手順を変更し、業務システムの変更を伴います。さらに、マニュアルを含む各種文書の再整備が求められ、会計・J-SOX・内部監査の見直しが発生します。「内部統制面は大変な苦労を伴うでしょう。やはり早めの準備が必要となります」と中村氏は強調しました。

一方で、「重要性等に関する代替的な取り扱い」の活用を推奨します。収益認識基準は、企業の財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で、8つの領域における11個の個別項目に対する代替的な取り扱いを定めています。

プロジェクトの進め方6つのポイント

最後に中村氏は収益認識基準に向けたプロジェクトの進め方を提案しました。

1.網羅的に検討すること

監査法人も巻き込んで、取りこぼすことなく網羅的に検討することが重要です。

2.経営トップ層を巻き込む

プロジェクトに経営層を巻き込んで、会社の方針として施策を進めます。

3.経理部のみで進めない

営業や経営企画など、関連するすべての部門からプロジェクトのメンバーを集めることが重要です。全社プロジェクトとし、このためにも経営トップの参加が必要となります。

4.子会社の情報をどうやって収集するか決める

とりわけ海外子会社の情報をどのように集めるかを決定しておきます。

5.新たに必要となる情報をどのように集めるかを決める

独立販売価格の決定など、収益認識基準には新たに必要となる情報が多くあります。その収集方法を決定しておきます。

6.論点の特性に応じた方針の進め方をする

例えば、議論の余地なく決定しなければならない論点について、は即断して次へ進めます。会社の方針を決めないとならない論点は、トップに判断を仰ぎ、決定していきます。また、影響度調査は自社内でできるにしても、他社事例は監査法人でなければわかりません。監査法人をいかにして動かすかが重要となります。

限られた時間での駆け足の講演となりましたが、会場は増設したサテライト会場も含めて満席となり、差し迫った収益認識基準に対する関心の高さと緊張感がうかがえるセミナーでした。

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