情報システムセミナーレポート[2018年 夏] 会計管理 仮想通貨のリスクと可能性

2018年6月7(木) 東京会場

C11
9:40-11:00
『経営管理を会計の視点で考える』シリーズ 第4弾
仮想通貨のリスクと可能性 – 技術的な仕組みから会計上の扱いまで –

金子 智朗 氏
ブライトワイズコンサルティング合同会社 代表社員 / 公認会計士 / 税理士

投機の対象として注目されながら、巨額の外部流出事件が相次いで発生したことによって、技術的にもリスクの高い「怪しげなもの」というイメージを持っている人も少なくない仮想通貨。一方で、新たな決済手段や資金調達手段として有望視されてもいます。この仮想通貨のリスクと可能性について、技術的な仕組みと会計上の扱いという2つの側面から解説しました。

仮想通貨は危ないのか?

仮想通貨の考え方が発表されたのは2008年のこと。その翌年2009年には、ビットコインが発行され、さらに翌年にはピザ2枚が1万ビットコインと交換されています。その後ビットコインは急騰を続け、2017年にはたった2枚のピザの価値しかなかった1万ビットコインは240億円の価値となり、投機目的として注目されるようになりました。

一方、2014年には115億円相当のビットコインが消失するマウントゴックス事件があり、2018年にはハッキングを受けて580億円相当の仮想通貨NEMが外部に流出するコインチェック事件が起こり、「仮想通貨は危険」というイメージが強まりました。「しかし、これらの事件は仮想通貨の脆弱性が原因ではありません」と、金子氏は解説していきます。

仮想通貨で使われている重要な技術は、ピア・ツー・ピア型ネットワーク、公開鍵暗号、ブロックチェーンの3つです。

ピア・ツー・ピア型ネットワークは、銀行システムをはじめとする従来の中央集権型ネットワークと異なり、1つのサーバーのダウンでシステム全体がダウンすることがないため、ゼロ・ダウン・タイムのシステムが実現できます。その一方で、組織的にもシステム的にも責任ある管理主体が存在しませんから、盗難、なりすまし、改ざんなどの懸念があります。

盗難やなりすましを防止するために使われている技術が、秘密鍵と公開鍵のペアで暗号化する「公開鍵暗号」です。これは従来から広く利用されている技術ですので何の目新しさもありません。 その基本的特徴は、「一方で暗号化したデータは他方でしか復号できない」ということです。この性質を利用することにより、「送信内容の秘匿」と「送信者の本人特定」が可能になるので、盗難やなりすましを防げるのです。

仮想通貨では秘密鍵をウォレット(サイフ)に入れて管理していますが、先の2つの事件では、この秘密鍵が盗まれたことで発生しました。特に、コインチェックでは、ウォレットをネットワークに常時接続していたので、不正アクセスによって容易に秘密鍵が盗まれたのです。
「秘密鍵が盗まれるのは、キャッシュカードと暗証番号が盗まれたことと同じですから、これが盗まれたらどんなシステムでもおしまいです。これらの事件をもって仮想通貨のセキュリティの弱さと考えるのは的外れです。」(金子氏)

改ざんが困難なブロックチェーンの技術

事後的な改ざん防止のために使われている技術が「ブロックチェーン」です。この技術が画期的であり斬新な部分です。ビットコインでは、約10分間に発生したトランザクション(取引)を1つのブロックにまとめ、そのブロックをつなげていきます。トランザクションは現場で発生した伝票であり、ブロックは一定期間の伝票情報をまとめて元帳に合計転記したものと考えればいいでしょう。仮想通貨では、このブロックがネットワーク上でどんどんつながっていくので、「ブロックチェーン」と言います。ブロックチェーンを一言で言えば、「ネットワーク参加者によって共同管理されている取引台帳」です。

ブロックチェーンが改ざん困難な理由は、新規ブロックをチェーンに追加する際の承認アルゴリズムにあります。ビットコインにおいては、新規ブロックとしてネットワーク参加者に承認されるためには、そのブロックがある条件を満たさなければなりません。その条件とは、前ブロックの情報、自ブロックに含めたトランザクション情報、そして「ナンス」と呼ばれるデータの3つをハッシュ関数という特殊な関数に入力し、その計算結果であるハッシュ値が一定桁数以下になることです。ハッシュ関数は、結果から元のデータを逆算できないという特徴があるため、このようなナンスを見つけるためには適当なナンスを使って手当たり次第計算するしかありません。ビットコインでは平均約10分を要します。条件を満たすナンスが見つかれば、その検証は誰でも瞬時にできます。

各ブロックのナンスの計算には前ブロックの情報を使いますから、過去のトランザクションを改ざんすると、そのトランザクションを含むブロック以降のすべてのブロックのナンスを再計算しなければなりません。それはあまりにも労力的に割が合わないので、誰も改ざんしようとしないのです。労力による承認プロセスなので、このコンセンサス・アルゴリズムをPoW (Proof of Work: 仕事量による証明)と言います。

改ざんは事実上不可能

仮想通貨の会計上の取り扱い

2018年3月、企業会計基準委員会(ASBJ)が、仮想通貨の実務対応報告を公表しています。その論点は2つ。1つ目は、仮想通貨は売買・換金性があることから、会計上は資産として取り扱うことができるということ。2つ目は、既存の類似資産に該当させることができず、仮想通貨独自の会計処理を制定しなければならないこと、です。

そして、下の表のように活発な市場が存在する場合に限りは貸借対照表価額を時価評価し、評価差額は損益計算書に計上するということになりました。イメージ的には、売買目的有価証券と近しい処理です。

また、法人税法上は今のところ明確な定めはありませんが、現時点では時価評価せず含み損益も認識しないと解されています。所得税法上では、「売却にともなう損益は雑所得として取り扱う」とされています。

ICOとその制度対応

仮想通貨の一つの活用方法として注目されているものにICOがあります。ICOとはInitial Coin Offeringの略で、企業がトークンと呼ばれる独自の仮想通貨を発行するし投資家に買ってもらうことです。

ICOを行う企業の狙いは資金調達、顧客基盤の確保などですが、「中には実体をともなわない詐欺まがいのものも少なくありません」(金子氏)
従来は、IPOによる資金調達のような規制も開示義務がなかったため、ベンチャーなどにとっては柔軟な資金調達手段になっていましたが、アメリカ、中国、韓国、東南アジア諸国など、各国で規制が強まっています。日本も金融庁等が検討を開始したものの、まだ具体的な規制は何もなく、規制という点では世界に後れを取っている状態です。

ICOは会計上の位置づけもあいまいです。株式発行を伴わないので資本金ではないし、かと言って返済義務がないので負債でもない。トークンという商品を販売したという解釈もあり得ますが、そうなると売上高に対して課税されてしまいます。それに、ASBJによる実務対応報告では仮想通貨は棚卸資産には該当しないというスタンスを取っていますから、商品の販売という解釈はそれに矛盾します。このように会計上の位置付けは不明確であるため、各当局も手探り状態で、監査も難航しているのが現状です。

ブロックチェーンの可能性

最後にブロックチェーンの可能性について言及しました。ブロックチェーンの本質は「改ざんが困難な分散管理台帳」ということにあります。この特性に注目すれば、管理するのは通貨である必要はありません。改ざんを防ぎたいあらゆるデータ管理に活用できます。ブロックチェーン上でプログラムを動かすスマートコントラクトは既に実現されていますし、それ以外にも不動産情報管理、個人情報管理、人事評価システム、サプライチェーン管理等のさまざまなデータ管理への活用がベンチャーを中心に検討されています。

「ブロックチェーンは、大変有望で可能性のある技術です。このような新しい流れに取り残されないようにするためには、何が危なくて何が危なくないのかを自分の頭で考えられることが重要です。そのためにも、是非ともその本質を理解してください。」と金子氏は呼びかけて、講演を締めくくりました。

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