セミナーレポート オービック情報システムセミナー 2011年秋

システムインテグレータのオービック

震災後のいま、日本企業に大切なこと『現場力』と『経営戦略』が強い企業をつくる

C11 9:10−10:40

企業の競争力は、中期経営計画書や本社の会議室ではなく、営業や製造など企業活動の現場にこそ存在します。現場起点で問題を発見し、経営戦略や新たな価値を創造する「現場こそが価値を生み出すエンジン」という企業経営のあり方について、遠藤氏に熱く語っていただきました。震災後の経営戦略に悩むセミナー参加者にとって、視野が開けるような、元気づけられるセミナーとなりました。

遠藤 功 氏
早稲田大学ビジネススクール 教授/株式会社 ローランド・ベルガー 会長

1.今回の大震災で見えたこと

会場の様子

アメリカ、ドイツ、中国を訪問して帰ってきた遠藤氏は「日本はまだまだ大丈夫」と断言します。アメリカは貧困層が15%にまで達し、ニューヨークでデモが起きるなど国家が荒れています。ドイツはギリシャやポルトガルの問題で怒り心頭に達しています。中国はインフレに襲われ、最低賃金も上げざるを得ず、競争力を失いかけています。
「相対的に見ると日本は決して悪い位置にいません。あるいはもう一度日本の時代が来るかもしれません。そのためにどうすればいいかを話してみたいと思います。ここでキーワードとなるのが『野望』と『現場力』です」と、遠藤氏は参加者に呼びかけました。

まず、遠藤氏は今回の震災で見えたこと、考え直すべきことを挙げます。それは、未曽有の震災ではありましたが、早いところはわずか2カ月で復興を遂げています。これを可能にしたのが現場の力であり、民の力です。現場力こそ、日本の競争力の原点なのです。その現場力には平時と有事があり、平時において当たり前のことを当たり前に実行していることが、有事の際に役立ちます。平凡の繰り返しが非凡となり、「実践知」を生むのです。

日本は過去50年の成長曲線を経て、バブルを頂点に失われた20年に入りました。「これは通常の商品の寿命が30年であることから不思議なことではありません。大切なのは、次の成長の50年をつくることです」と遠藤氏は訴えます。

2.現場力とは何か

経営には、なぜこの会社が存在するのかという「ビジョン」、どのような価値を生み出すかという「戦略」、価値をどのように生むかという「オペレーション」の3層が必要です。「この3つをもって競争力となりますが、とりわけ大事なのがオペレーション、すなわち現場力です」(遠藤氏)戦略はまねが容易で寿命が短いのですが、現場力は「能力」であり、簡単にはまねできません。

そして、現場力の3つの条件を示します。

  1. 現場力とは自ら問題を発見し、解決する力である。
  2. 全員参加の組織能力であり、点ではなく面の力である。
  3. 経済的価値を生むことのできる独自の優位性である。

さらにキーワードとして「問題」と「改善」を指摘します。「問題のない会社は存在しません。その問題を隠すことなく向き合い、改善して成長の『てこ』にするのです。すでに陳腐化された言葉ですが、改善の積み重ねが重要です。これこそ日本企業の得意とするところです」(遠藤氏)
ではこの問題解決に求められるものは何でしょうか。ここから遠藤氏独自の「見える化」のあり方が展開されていきます。

3.「見える化」をアクションにつなげる

問題を解決する以前に、問題の発見が求められますが、ここで必要となるのが「見える化」です。この見える化はもともと、問題を隠すことができない工場の現場から唱えられて来た言葉です。これが、次第に営業部門や管理部門、研究開発部門でも使われるようになってきました。
「もっとも『見える化』は見えただけでは意味がありません。多くの場合『見える化』のための『見える化』、すなわち情報共有で終わっています。目的は問題解決です。解決できない問題は見えないほうが幸せです」(遠藤氏)

解決のためには、情報共有だけではなく共通認識まで高めなければなりません。そのためには対話が求められ、コミュニケーションを重ね、組織密度を上げなければなりません。「いい現場はぶれません。情報の認識に温度差があってはいけないのです」と、遠藤氏は訴えます。
「見える化」は次のアクションにつながることで、価値を持ちます。「見える化」が「気付き」を生み、「対話」と「思考」を増やし、「行動」へとつながり、「変化」が発生します。

この地道な作業を10年は続けなければならないと語ります。「改善による進化を10年続ければ組織の“くせ”になります。そして、いつかブレークスルーが生まれ、組織が革新されます。いきなり革新を求めてもできるものではありません。10年もの継続した進化の延長上にあるのです」(遠藤氏)

4.『ノリ』のいい会社へ

「どうもいまの多くの日本企業は『ノリ』が悪い」と遠藤氏は指摘します。『ノリ』とは会社全体の雰囲気やムードのことで、『ノリ』が悪いままでは、逆転も挑戦も起こりません。『ノリ』は、放っておいて起こるものではなく、意識的に創り出すべきものです。

「私の知っている会社に、『ノリ』を良くするために毎週バーベキューしているところがあります。全社員が昼間に集まって、材料を刻み、下ごしらえをし、焼いて、食べる。この全てをお昼の1時間で行ないます。こうした共同作業を通じて、対話が生まれ、笑いが生まれ、『ノリ』が良くなるのです」(遠藤氏)。
「ノリ」を良くするには次の4つの要素が必要です。

  1. 仕事:適度にストレッチした責任・役割を与えること。
  2. 認知:認める、褒める、関心を示すこと。
  3. 関係性:人間同士の絆、仲間意識(兄貴、親父)を持つこと。
  4. 「ノリ」は伝染する:職場の雰囲気づくり、ムードメーカーがいること。

「逆に会議の席で社長が口癖のように『大丈夫か?』を繰り返す会社はよくありません。社員が萎縮してしまいます」(遠藤氏)。

最後に遠藤氏は宅急便で知られるヤマト運輸のDVDを紹介しました。10分ほどでしたが、同社セールスドライバーのモチベーションの高さが伝わってくる内容であり、「現場力」の重要性をあらためて認識する感動的なDVDでした。
「皆さん、前向きになりましょう。そしていい会社になりましょう」と遠藤氏は来場者にエールを送りました。

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